仕事で機械を操作しているときにミスをしてケガをしてしまった。
会社の責任を追及して十分な補償を得たい。
機械の操作ミスがある場合にどの程度の過失が認定されるのか裁判例の傾向を知りたい。
この記事はこのような方のために書きました。
弁護士 山形祐生(やまがたゆうき)
静岡県弁護士会所属(44537)
静岡県が運営する交通事故相談所の顧問弁護士(静岡県知事の委嘱による)。
労災事故、交通事故など、損害賠償請求事件を得意とする。
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機械操作中の労災事故
仕事で機械を操作しているときの事故によって負傷した場合、被災者(労働者)は、労災法に基づく労災保険給付の要件を満たせば、労災保険給付を受けることができます。
しかし、労災保険からの給付だけでは、補償として不十分なケースもあります。
そのようなケースで、会社側の安全対策に不備があったことが事故の原因となっている場合などは、会社に対して、使用者責任を追及し、会社からの補償を請求することが考えられます。
以下、労働者が会社の安全配慮義務違反を主張して起こした裁判例について紹介します。
裁判例の紹介
東京地裁・平成21年3月9日判決(安全配慮義務違反を肯定・原告の過失50%)
本件は製菓工場内のパイローラー機の清掃を行っていた外国人労働者が左手を挟まれて、左示指解放骨折をしたというものです。
会社側は、パイローラーの危険性や清掃方法については原告に教示しており、特に、ローラー部分については機械を静止状態にして作業をするよう教示していたとして、安全配慮義務違反について争いました。
裁判所は、以下のとおり、手を挟み込む事故が発生しうる危険な機械であるにもかかわらず、説明書等を作業員に持たせておらず、また、日本語が不十分な被災者に対して口頭での説明に止まっていたという事情などから、会社の安全配慮義務違反を認定しました。
本件パイローラーは、動力を用いてベルトを回転させ、ローラー部分によりパイ生地を圧延することを主たる機能とするものであり、その操作如何によっては、回転移動するベルトに作業者が手を挟み込むといった事故が起きることが予想される機械であったこと、本件パイローラーの取扱説明書ないしマニュアル等を被告は所持していなかったこと、操作方法や注意事項について、本件パイローラー付近に掲示して周知させるといった措置はしていなかったこと(争いがない)、パイローラーの清掃方法についても、必ずしも日本語を十分に解しない原告に対し、口頭での説明に止まっていたこと、本件事故の2日前に、B工場長自身が、本件パイローラーの電源スイッチを「オン」にしたまま、ベルト部分の清掃を行っており、本件事故も、これを見ていた原告が同様の方法をとったことに起因すると認められることなどからすれば、被告は原告に対し、本件パイローラーの操作及び清掃方法に関し、原告を危険から保護すべき義務を怠ったものといわざるを得ない。
もっとも、裁判所は、被災者においても「電源スイッチを『オン』にしたまま清掃作業をしていたのを見て、主に作業速度を速くすることを考えて、その危険性を十分考慮しないまま、同様の方法で漫然と清掃作業を行い、その結果本件事故が起こったことなどからすれば、原告にも過失が認められる」として、50%の過失を認定しました。
東京地裁・平成22年2月19日判決(安全配慮義務違反を肯定・過失について判断なし)
本件は、派遣労働者として働いていた原告がベルトコンベアに左足を挟まれ左足関節靱帯損傷を負ったという事案です。
会社側は、安全配慮義務違反を争いましたが、裁判所は以下のとおり、会社側が従業員らに対して、注意事項について十分な説明をしていたとはいえないこと、ベルトコンベアの再始動についてのマニュアルが備え付けられていなかったことなどから、会社の安全配慮義務違反を認定しました。
機械の不具合以外の理由でベルトコンベアが停止され、その際に、作業員が持ち場を離れる場合、あるいは作業員が持ち場を離れて、ベルトコンベアの周辺で保守等の作業を行う場合にも、ベルトコンベアを再始動するに当たっては、スイッチ操作を行うこととされた労働者が声かけ等を行い、ベルトコンベア周辺にいる労働者の安全を確認してからスイッチ操作を行うなど、ベルトコンベア周辺にいる労働者に危険が及ぶことを防ぐための措置をとることが不可欠であり、事業者である被告は、上記作業についての役割分担と作業手順等の注意事項を作業員に徹底させるなど、ベルトコンベアによる事故を防止するための措置をとるべき義務を負っていたと解するのが相当である。
しかしながら、ベルトコンベアが、機械の不具合以外の理由で停止され、その際に、作業員が持ち場を離れる場合、あるいは作業員が持ち場を離れてベルトコンベア周辺で保守等の作業を行う場合について、被告が上記のような役割分担やベルトコンベアの再始動に関する作業手順等の注意事項を作業員に徹底させるなどの措置をとっていたと認めるに足りる証拠はない。また、被告の作業現場では、作業開始前のミーティングにおいて、ベルトコンベアでの選別作業を行う際の役割分担とベルトコンベアにゴミが詰まるなどの不具合が生じた場合の作業手順等の注意事項について作業員に対し説明と注意が行われていたが、そのようなミーティングの役割分担及び注意事項の厳守が必ずしも作業員に徹底されていたと認められないことは、上記(1)のとおりである。
そして、被告の作業現場では、本件事故当時、ベルトコンベアの修理等の際にスイッチに鍵をかける、表示板を付ける等、修理等の作業に従事する労働者以外の者が、ベルトコンベアを運転することを防止するための措置をとっておらず、ベルトコンベアの再始動についてのマニュアルが備え付けられていなかったことは被告も認めるところであり、他に上記義務を果たしていたことを示す証拠もないことからすれば、被告には安全配慮義務を怠った過失があるといわざるを得ない。
なお、本件では、会社側は原告の過失割合も主張していましたが、原告の派遣元との示談金や労災保険による損害が補填されていたと認定されたため、過失割合については判断されませんでした(つまり、過失割合について判断するまでもなく、原告に支払われる賠償金はないとの判断です。)。
大阪高裁・平成23年2月17日判決(安全配慮義務違反を肯定・原告の過失60%)
本件は、原告が工場内でプレス機を操作中、両手指を挟まれ、両手指挫滅創(両手の親指以外の8本の指を失った)を負ったという事案です。
プレス機は、様々な形状・大きさのチタン材をプレスするために使用されていましたが、作業者の手が危険領域に入らないようにする安全装置が設置されていませんでした。
また、フットスイッチを一旦踏むと、プレス板の動作を止めることができない構造でした。
これらの事情から、裁判所は以下のとおり、会社側は、作業者の身体が危険領域にある場合に自動停止する機構や、両手押しボタン操作式のスイッチ、フットスイッチを押している間のみプレス板が作動する機構などの安全装置を設けるべきであったとして、安全配慮義務違反を認定しました。
(1) 前記認定事実によれば、控訴人チタン事業部では、様々な形状・大きさのチタン材をプレス機にかける必要があり、プレス面から部材がはみ出したままプレスすることも予定され、また、チタン材の形状如何によっては上下プレス板の間に部材を押し入れるなどの作業も当然に予定されたにもかかわらず、本件プレス機は、プレス板の移動中に作業者の手が危険領域に入らないようにするための装置は、そもそも設置されていなかったものである上に、本件プレス機は、フットスイッチを一旦踏むと、踏むのを止めてもプレス板が動作するのを最早止めることができない構造になっていたもので、このような作業を業務として多数回反復継続するときには、短期間で多くの結果が求められる労務作業の下では、何らかの要因(作業者の不注意も含む。)で作業者の手がプレス板に挟まれるなど従業員の身体に対する具体的な危険が予想されるもので、それに対する防止措置がとられていなかったといえる。
(2) 労働安全衛生法及び労働安全衛生規則においても、事業者は、機械による危険を防止するために必要な措置を講じなければならず(労働安全衛生法20条1号)、プレス機については、スライド(上下動する部分)による危険を防止するための機構を有するプレス機を除いては、当該プレス機を用いて作業を行う労働者の身体の一部が危険限界(スライドが作動する範囲)に入らないような措置を講じなければならず(労働安全衛生規則131条1項)、作業の性質上このような措置を講じることが困難なときは、所定の安全装置を取り付ける等必要な措置を講じなければならない(同規則131条2項)ものとされている(なお、甲8、9、15参照)。
(3) 控訴人としては、本件事故当時、本件プレス機の使用については、作業者の身体が危険領域にある場合に作動を自動停止させる機構を設けたり、スイッチを両手押しボタン操作式とすることで作動中に手が危険領域の外にある状況を確保したり、フットスイッチを押している間のみプレス板が作動する機構として作業者がプレス板移動中にプレス面上で作業する危険を回避できるようにするなど、何らかの安全装置を本件プレス機に設けることで、作業者の手がプレス板に挟まれる事故を確実に回避する措置をとるべきであったもので、使用者としてこのような安全配慮義務を負っていたというべきである(労働安全衛生規則131条1項、2項の規定内容に照らしても、上記のことは肯定される。プレス板の作動速度が秒速約1.38cmと相当遅いものであったことは前記のとおりであるが、そのことは、直ちに上記義務を否定する根拠にならない。)。しかし、本件プレス機は、前記のとおり、フットスイッチで操作する方式を採用し、一旦、この操作によってスイッチを入れると上下一行程を終えるまで本件プレス機の動作を停止する機構がなかったのであり、控訴人は、上記の安全配慮義務に違反し、その結果本件事故を生じさせたものと認められるから、債務不履行に基づき、被控訴人の被った損害を賠償する義務を負うものと解するのが相当である。テキストが入ります。
ただし、過失相殺について、裁判所は「本件プレス機のプレス板の作動速度は秒速約1.38cmと相当に遅く、上部プレス板が約18cmの距離を下降し終わるまでに約13秒を要するため、上部プレス板が下降を始めてからそれが作業者の手に触れるまでにも一定の時間の猶予があったものと考えられ、被控訴人としては、仮に部材の出し入れの途中にフットスイッチを押してプレス板が作動を始めたとしても、プレス板の作動状況に気付き次第、部材又は手を危険領域から外に出しさえすれば、危険を回避することは比較的容易であったと認められる。」などとして、被控訴人(被災者)がプレス機のプレス版の作動状況を確認することを怠った点について、60%の過失を認定しました。
大阪地裁・平成23年3月28日判決(安全配慮義務違反を肯定・原告の過失30%)
物流センターにおいて、派遣社員として働いていた原告がフォークリフトを運転していた際に、他のフォークリフトと衝突して左下腿骨(脛骨)内顆骨折等を負ったという事案です。
本件では、物流センターを管理していた会社(Y1)と原告を雇用していた会社(Y2)の2社を相手方として、原告は各社の安全配慮義務違反を主張しました。
それに対して、裁判所は、以下のとおり、Y1、Y2のいずれについても安全配慮義務違反を認定しました。
(Y1について)
本件物流センターでフォークリフトを使用する場合には,フォークリフトの運転者が運転を誤り,又は作業所内でのフォークリフトの走行経路と作業員の歩行経路とが複雑に交差して事故が発生する危険性があるものということができるから,Rの作業において,労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は,上記のような事故が発生することのないよう,上記法規制の趣旨・内容をも勘案の上,①前記のようなフォークリフトによる作業計画を定め,これを作業員に周知し,これに従って作業を行うこと,②作業に当たっては指揮者を定め,上記作業計画に基づき作業の指示を行わせること,③フォークリフトの運転を要する業務は,同資格を有する者のみに担当させること,などの安全対策を講ずべき義務があったと解すべきである。
それにもかかわらず,前記認定事実によれば,被告Y1は,本件事故当時,①前記のようなフォークリフトによる作業計画を定めていたとは解されず(平成22年2月時点の乙17のような作業計画が,本件事故当時も作成されていたとは解されない。),②また,作業の指揮者についても,Rの作業に関するリーダーが明確ではなく,アルバイト従業員である原告が実質的に作業を取り仕切っており,③さらに,フォークリフトの運転資格を有しない原告及びBに,その運転を要する業務を担当させていたものである。
したがって,被告Y1には安全配慮義務違反があり,その結果,Bがフォークリフトの運転を誤る事態を引き起こし,本件事故を生じさせたものというべきである。
(Y2について)
①原告を含む被告Y1の作業員は,被告Y2が管理する本件物流センター内に作業場所を提供され,②同被告から提供されたフォークリフト等の機具を使用して作業を行い,③同被告の従業員からの仕分けリストの交付や指示は,必ずしも被告Y1の現場責任者を介して行われるわけではなく,現場のアルバイト作業員である原告らに直接行われることがしばしばあり,④その際には,被告Y2の従業員が,被告Y1の作業現場を訪れたり,原告の携帯電話に連絡を入れたりすることがあり,⑤被告Y1の作業が終了した際には,少なくとも作業終了時刻が記載された作業の完了報告書が,被告Y2の本件物流センターの次長宛に提出され,⑥本件事故後には,被告Y2の従業員が,自家用車を運転して,原告を病院に搬送したというのである。
これらの事情を総合すれば,原告を含む被告Y1の作業員は,基本的には同被告から直接の指揮監督を受けていたものの,一定の範囲では,被告Y2の従業員からも直接に指揮監督を受ける立場にあったというべきである。特に,被告Y2が所有し,提供していたフォークリフト等の機具を用いて行う作業に関しては,同被告の従業員は,日常的にその様子を目にしており,作業に危険な点があった場合には,いつでも注意をすることができる立場にあったといえる。
したがって,被告Y2は,原告に対し,特にフォークリフト等の機具を用いて行う作業に関しては,指揮監督権を行使することができる立場にあり,実質的に労務の供給を受ける関係にあったと解されるから,信義則上,原告に対し安全配慮義務を負うものといえる。
そして,上記事情に照らせば,被告Y2は,本件物流センター内で,その所有するフォークリフトを,特段の用途や管理上の制約を付することなく被告Y1側に提供していたのであるから,被告Y1がこれを適正に作業員らに使用させ,管理しているかどうかを容易に把握することができ,また把握すべき義務があったというべきであり,これを尽くしていれば,同被告が,運転資格を有しない者にフォークリフトを運転させるなどしていたという前記の実態を把握することができたといえる。
それにもかかわらず,被告Y2は,上記義務を尽くさなかった結果,BがB車の運転を誤る事態を引き起こし,本件事故を生じさせたものというべきであるから,安全配慮義務違反があったと認めることができる。
そして、過失相殺については、「原告は、本件事故の際、B車が接近してきたのに対して、左足を出したため、左足に骨折等の傷害を負ったところ、上記行為は、とっさの行動であったとは考えられるものの、事故回避のための行動として、合理的なものとはいえず、本件事故について原告にも過失があったというべきであるから、3割の過失相殺を行うのが相当である。」として原告に30%の過失を認定しました。
なお、会社側は、原告が運転資格を持たないのにフォークリフトを運転していた点について主張していましたが、これは、Y1の指示によるものだから、この点を理由に原告に不利な修正はしないとの判断を示しました。
横浜地裁・平成23年9月27日判決(安全配慮義務違反を否定)
本件は、移動式クレーン車の運転手として被告に勤務している原告が、以下のとおり、2つの事故について被告の安全配慮義務違反(債務不履行)を主張し、損害賠償を請求したという事案です。
第1事故
原告がラフタークレーン車の張出作業中に、誤って補助ジブの固定ピンを引き抜いたため、補助ジブが落下し、原告がこれにはじき飛ばされました。
裁判所は、第1事故について、以下のとおり、会社側はマニュアルや指導等を十分にしており、本件事故は、操作マニュアルを確認することなく作業を行って、本来抜くべきではないピンを強引に引き抜いたという単純な操作ミスを超えた想定外の行動によるとして、安全配慮義務違反を否定しました。
原告は,第1事故当時まで,約25年もの間,主として移動式クレーンを中心とした重機の運転作業を担当していたこと,原告は,平成11年に第1事故車両の引継ぎを受け,その後約5年間,担当車両として運転を行っていたこと,補助ジブの張出作業は特殊な技能を要するものではなく,原告は,年間5,6回,補助ジブの張出作業を行っており,第1事故の2,3か月前にも手順を間違うことなく補助ジブの張出作業を行っていたことに鑑みれば,原告はクレーン車の運転を長年にわたり担当してきた熟練労働者といえる者であり,第1事故車両の運転担当者として,第1事故車両の操作手順を熟知し,第1事故車両を安全に操作することを期待されていたといえるから,被告の安全配慮義務としては,原告が,補助ジブの張出作業の手順が分からなくなった場合にはそれを確認するためのマニュアルを備え置いたり,補助ジブの張出作業がうまくいかなかった場合には,作業を中止し,上司に報告することを指導していたことで足り,原告の想定外の行為についてまで対応措置を講ずべき義務はなかったというべきである。そして,被告は,第1事故前に発生した補助ジブの落下事故を受け,第1事故車両に操作マニュアルを備え置き,また,労働者に対し,作業において問題が発生していた場合は,作業を中止し,上司に報告することを指導していたのであるから,安全配慮義務を尽くしていたと認められる。
それにもかかわらず,第1事故が発生したのは,原告が補助ジブの張出作業の手順を熟知していると軽信し,操作マニュアルを確認することなく補助ジブの張出作業を開始し,結局,作業手順を誤って,本来抜くべきではないピンを強引に引き抜いたという,単純な操作ミスを超えた想定外の行動によるものと認められる。
第2事故
原告がトラッククレーン車の乗車ステップに乗ってクレーン部の運転室のドアをスライドさせて開けようとした際、1.9メートル下の地面に落下しました。
第2事故についても、裁判所は、以下のとおり、原告が会社側が指導していた内容に従わずに作業をしていたとして、安全配慮義務違反を否定しました。
原告は,クレーン運転士としての長年の経験から,また,職場懇談会等を通じて,重機の昇降時には三点支持が重要であると認識していたこと,第2事故車両のクレーン部の運転室の乗車ステップの幅は25センチメートルほどしかなかったが,クレーン部の運転室の周りには,前部に手すりと上部に雨どいが設置されており,これらを利用して三点支持は可能であったこと,法令上,第2事故車両の改造には制限があったことが認められ,これらの事実に鑑みれば,被告の安全配慮義務としては,職場懇談会等を通じて,重機からの昇降時や点検作業時における転落の危険性と三点支持の重要性を認識させ,重機からの昇降時や点検作業時に,三点支持を順守することを指導することで足りるというべきであり,被告は,そのような指導をしていたと認められるから,被告に安全配慮義務違反があるとは認められない。
それにもかかわらず,第2事故が起きたのは,原告が,左手にペットボトルを持ちながら,クレーン部の運転室上部の雨どい付近に手を当て,三点支持を順守しなかったためであると認められる。
裁判例の検討
ここの掲載した以外の裁判例についても調査しましたが、多くのケースで安全配慮義務違反が認められていました。
安全配慮義務違反が違反が認められないケースとしては、最後に紹介した裁判例のように労働者が会社側からの指導内容に従わずに危険な態様で作業をしていたという場合があります。
労災事故では、労働者側にも少なからずミスがあるケースが多くありますが、裁判例の傾向からすると、ある程度のミスをすることは前提にした、指導や安全策を講じることを会社側に求めているといえます。
ただし、先ほど挙げた裁判例のとおり、安全配慮義務違反が認められたとしても労働者側にも過失があるケースでは、少なくはない過失相殺がありますので、その点は注意が必要です。
この記事を書いた弁護士
弁護士 山形祐生(やまがたゆうき)
静岡県弁護士会所属(44537)
静岡県が運営する交通事故相談所の顧問弁護士(静岡県知事の委嘱による)。
労災事故、交通事故など、損害賠償請求事件を得意とする。
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